<よかネット>No.68 2004/3
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公園のシンボルをみんなでつくろう
〜日時計壁画づくり編〜
                伊藤 聡

 福岡県稲築町の中心部にある稲築公園で、拡張整備が行われており、その中に住民参加によるシンボルづくりをしようということで、日時計と花壇をつくることになった。平成15年の春に、住民参加の事務局グループとして、住民と町職員が集まった「元気にさかせ隊」が結成された。前回(よかネットNo.66)は人の輪を広げるためのシンポジウムについて報告したが、今回は日時計づくり、特に壁画のモザイクタイルづくりの報告をしたい。

人が立ったら時間が分かるかげぼうし日時計

日時計は、公園の中にシンボルをつくろうと話をしたときに、形として長く残っていくものとして考えられた。

最初は、何かオブジェにしようかという話だったが、単に見るだけでは面白くないということで、子どもの学習にもなるし日時計にしようという案が出た。それから様々な日時計の種類を調べていく中で、「かげぼうし日時計」というものに出会った。かげぼうし日時計とは、平たい文字盤があり、東西方向に長い楕円上に時刻を示す数字が描かれ、人が文字盤の中央に立つと、自分の影が文字盤の数字を指す、というもの。夏は影が短いので目盛に近い方に、冬は遠い方に立つよう、月によって立つ位置が決められている。

 この日時計は、平面に文字盤があるだけで出っ張りもなく、いたずらや破壊される心配も少ない。しかも調べた本によれば、世界でもまだ2つしかなく珍しいらしい。と思っていたが、後で見ると20数年前に出た文献が元で、実はその後増えているらしい。

文字盤だけだからといって日時計の形が単なる平面ではオブジェにならない。瀬戸市にあったかげぼうし日時計が四角の台形状になっていたのでそれを参考にし、楕円形の台状にした。それに、日時計に立ったときに目の前に何か欲しいということで、楕円形の正面に背の高さくらいの壁面を付けることにした。壁面の大きさは横約6m、高さ約2mの扇形になった。

壁画を作ろう

 その壁面をどう飾ろうか、ということで、壁画を描くことにした。壁画の題材は稲築町の子どもたちに夏休みの間に募集し、「町の未来」「仲間」「ふるさとの四季」のテーマで描いてもらったところ、8点の作品が集まった。友達が手をつないでる絵が多かったが、獅子舞、四季の木(1本の木で春夏秋冬を表したもの)、あるいは犬と猫が手をつないでいる「?」な絵などもあった。「元気にさかせ隊」のメンバーで集まった作品を見て選考会をしたが、どれかに絞ることはできず、結局、全ての作品をコラージュしようということになった。試行錯誤のコラージュの末にできた図案は、真ん中に獅子舞を置き、両端に四季の木、その間に獅子舞のお囃子や友達を配置したデザインとなった。

モザイクタイルで大きな絵ができるか

 さて、これをどう作るか。たくさんの人が作成に関わることが大きな目的だから、絵を描くというだけではつまらない。最初は陶板を焼いて大きな一枚の絵にしようかという案があったが、焼くのが大変、割られたらどうする、等の心配が大きく断念。磁器タイルに絵を描くのは、きれいだが高いらしい。そして出た案がモザイクタイルだった。全面ではないが、コラージュした絵のパーツをモザイクで作ろうということに。

モザイクタイルがいけそうかどうか、公園づくりシンポジウムの開催に合わせて、体験をしてもらったところ、どうやら可能性あり。参加した人も細かい作業にはまって楽しんでいた。その時のタイルは、一般の内装用タイルを割ったものと、市販の10mm角のモザイクタイル、ビーズなどを混ぜて使ったが、タイルの厚さが違うと目地がきれいに仕上がらないことや、内装用タイルでは色数が揃わないことから、専用の10mm角と15mm角のモザイクタイルを購入することにした。

「元気にさかせ隊」には女性の高校の美術の先生もメンバーとして入っている。その先生に、コラージュした下絵のデザインを基に、タイルの色見本を見ながら、色を細かく指定してもらった。この服の色は何番と何番のタイルを3:1の割合で、という風に。それをパーツの色ごとの面積で割り振って、必要なタイル数を計算した。

大きな絵もピンセットでひとつずつ

タイルを貼っていくには、実物大の下絵が要る。比較的小さいパーツ(といっても50cm×50cmくらい)はカラーコピーを拡大して板に張り、大きい部分は立てたベニヤ板にプロジェクターで絵を投影してマジックで形を取っていった。

 モザイクタイル製作参加者を広報で募ったところ、多くの住民、グループ、職員が集まった。高齢者もいるし、小学生もいる。それに町内に2つある中学校の美術部の生徒も加わってもらった。絵のパーツごとにチームを組んでもらい、大きなパーツの「獅子舞」と「四季の木」は2つの中学校にお願いした。この日時計壁画に係わったボランティアは、全部で69人であった。

 製作作業のために役場の会議室を毎日貸し切りにし、時間のある人がいつでも作業できるようにした。昼休みに来る職員もいれば、夕方日が暮れる頃に来る人もいたし、休日だけ来る人もいた。

下絵の上にモザイクタイルを並べていき、隙間や細かい形のところは小さなタイルをさらに専用のニッパー(喰切という工具)で割って埋めていく。10mm角のタイルでも、細かい部分を作るには意外と大きい。人の顔などは特に難しい。高さ1mを越す大きなパーツでも、実はひとつひとつのタイルをピンセットで並べていく作業だ。人の服などでも、一色ではなく二色で立体感を出したりする。結構根気がいる。けれどやっているとだんだん出来てくる。しかも何だか芸術的。約2週間の作業期間でほぼ並べ終わった。

モザイクを壁面へ貼り付け、完成

次に、この並べたモザイクをどうやって現場に運ぶか。大きめのものは、会議室の入口より幅が広い。手順としては専用の紙シートをタイルの上からのりで貼って、ある程度の大きさに分割して、現場で再度つなぎ合わせる方法を考えていた。最後の壁面への貼り付け作業は、プロの工事屋さんにお願いをしていたため、実物を見てもらって話し合ったところ、なるべく分割せずに現場に運ぼうとのこと。

 のり付け作業に入るが、専用の紙シートというのが30cm角の小さなシートで、たくさんつなぎ合

わせないといけない。専用ののりといってもらったものは、何だか洗濯のりみたいで頼りない。こんなもので本当にタイルと紙が付くのか?。仕方なくタイルに試してみたところ、乾けば意外と強くくっついていたので、とりあえず安心してのり付け作業を行った。のりが乾けば立てても裏返しても一応大丈夫なので、それを現場に運んだ。一番大きな獅子舞の絵だけは、シートに切れ目を入れて分割した。

現場での壁面への貼り付けと目地入れまではプロの方にやってもらったが、壁面から紙シートを剥がすとき、付きの悪いタイル片はこぼれ落ちてしまう。あまり多く落ちると、どこにはまっていたタイルか分からなくなって補修が大変だが、こぼれたのはほんの一部ですんだ。目地を入れ、周囲のタイル以外のスペースはペイントして、ワンポイントに花の絵なども入れて、完成。

モザイク壁画は、原画を上回る出来で、タイルの色の混じり具合、微妙な濃淡など、実に味のある仕上がりになった。遠くで見て美しく、近くで見て面白い。真ん中の獅子舞などは、結構な迫力だ。

「モザイクタイルでやろう」と言ったとき、「そんなの絶対無理」という声もあったが、参加者の熱心さもあって、完成にたどりついた。これから先、いたずらの心配も少しはあるけれど、住民参加のシンボルとしては十分なものになったと思う。長く愛されて欲しいし、長く語り継がれて欲しい。

 太陽の光をあびて、タイルのひとつひとつがきらきら輝いている。    (いとう さとし)




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