<よかネット>No.68 2004/3
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学生が将来何をしたいかを真剣に悩める場づくりを行っている
〜聖徳大学現代ビジネス学科の取り組み〜
                本田 正明

 ●これは現代若衆宿かもしれないと思った聖徳大学の現代ビジネス学科
   「必修科目で半年間のインターンシップを行っている大学が千葉の松戸市にあるらしい。」ある朝、事務所に来るとそんな話題が持ち上がっていた。新聞の切り抜きを見せてもらうと、200字程度の短い文章ながら、「インターンシップの体験者47名のうち、約3分の1がインターンシップ先に就職した。」などと非常に興味深いことが書いてある。たまたまそのころ、久留米の地域づくりなんでも相談会で「現代若衆宿」のプロジェクトが立ち上がりはじめたころだったので(前号参照)、非常に参考になるかもしれないと思い話を伺いにいった。
人の顔、現場の様子が浮かぶようなホームページ
 聖徳大学(女子大学)はもともと1933年(昭和8年)に幼稚園と家政学院として開校したところで、大学ができたのは1990年(平成2年)とかなり新しい。インターンシップを行っている現代ビジネス学科は、2000年に開設した学科で、今年初めて卒業者を出すことになっている。  どんなところなのだろうと、事前にインターネットで調べてみたら、学校教員や保育士の育成、社会福祉などの言葉の間に突如として企業マーケティングや経営文化といった言葉が出てくる。公務員専門学校とビジネススクールがいっしょにあるような違和感を感じながら、学科の詳細な紹介ページをみると、他の学科は教員か職員の方が作ったと思われる“学科の組織とシステム”の紹介なのに対し、現代ビジネス学科は学生が作った“学校生活の体験”の紹介ページになっていた。  表紙ページにはいきなり学生の描いた先生方の似顔絵が出てきて、「先生方へのアンケート調査項目」といった形で先生のメッセージが紹介され、学生が自分たち自身をよく知ってもらうために作ったというページが出てくる。インターンシップの体験談や女性起業論といった講義の毎回の概要が、30ページぐらいのボリュームで載っていた。
理念は“人との関わり合い”をきちんと教えていくこと
 なぜ、この学科だけそんな取り組みができるのだろうかと不思議だったので聞いてみると、「ビジネスに通じた民間出身の先生が5名いらっしゃるんです。」ということだった。 現代ビジネス学科の基本コンセプトやインターンシップのアイディアは学長が持っていたものらしく、民間出身の先生方も学長が中心となって引っ張ってこられたそうである。そして、その民間出身の先生たちがインターンシップや女性起業論といったプログラムの中心的な役割をしているのだそうだ。  大学を含む聖徳学園全体の理念には、「人は、個と個の関わり合いの中で社会を構成し、地域と地域が結びついて社会を構成しています。人が生きていく上で最も大切なことは、“人と人の関わり合い”であり、社会全体が豊かになりうるか否かの鍵を握っています。学園創立者が最も重視したのは、自らの体験を含めて、この“人との関わり合い”をきちんと教えていくことだった」と、我々が個族論の結論で考えていたこととまったく同じようなことが書いてあった。本質的な問題への意識が同じであれば、考えつく対策のアイディアも似てくるのかもしれない。
母親が「自分だったらこの学科に行きたい」と娘に薦めた
 学生の親の反応について伺うと、「学生の両親は共働きの人が多く、実家から通学する学生も多いんです。だから女性が働くことについて抵抗が少ないのかもしれません。」、「自分が若かったら、この学科に行きたいという母親の薦めで入学した学生もいます。」といわれた。  核家族が安定した社会システムとは言えなくなり、個族化によって女性も社会で自立して生きていくことが必要になっているということが、すでにニーズとして認知されはじめているのだなと感じた。  6月のインターンシップを実際に行うまでは、教員の方は、3Kなどと言われるのではないかと心配したそうだが、インターンシップ後、娘の服装も落ち着いたものになり、姿勢も良くなったと話す父親もあり、評判はよいそうだ。最初にも書いたが、インターンシップ体験者の3分の1が体験先の企業に就職するなど、インターンシップが学生の就職試験にもなっている。  インターンシップは3年生の必修科目なので、2年生までの間に業務に最低限必要なビジネスマナーや一般常識などをケーススタディやロールプレイングを通じて学べる。パソコンの知識や技術なども身につけられるようになっており、女性の起業家たちを呼んで起業体験を聞く女性起業論などの授業も行われている。  学生が社会に出るための準備期間として、大学ができることをきちんと考えていて、私が学生のときに学んでおきたかったと思うようなニーズに応えた教育サービスを行っている。
インターンシップ室が学生と受入企業のコーディネイトとサポートを行う
 大学内には、8〜9名の担当教員からなるインターンシップ室というものが設置してあり、最低月1回は担当教員が受入先企業の担当者と懇談し、学生の実習状況を確認している。また学生も月に2回ほど大学に集まり、意見を交換し、問題点を話し合うなど、ひとりひとりによりよい成果をもたらすように配慮している。  受入先企業の紹介もインターンシップ室が行っていて、協力企業の業務内容や学生の希望などを考慮し、学生とインターンシップ室との懇談の上、企業を決定しているそうだ。  将来の進路決定のために有意義な実習とするために、インターンシップ期間中、なるべく異なる業務が経験できる複数セッションへの配置を依頼したりもしている。  インターンシップは学業の一環ということで、無報酬で行っており、交通費や昼食代も原則として出していない。無報酬にしている理由としては「報酬がないので、学生がアルバイトのような扱いを受けないで済み、目的に純粋になれると思います。」ということだった。
インターンシップの経験が、学生の自信につながる
 インターンシップ後の学生の変化について聞いてみると、「自分に自信を持つ学生が増えていますね。以前はみんなの前でマイクを持つと手がふるえていた学生も、インターンシップ後は堂々と自分の意見を言えるようになっていました。」と目に見えて変わっているそうだ。ホームページに載っている学生の体験談を見ても、授業や就業に対するモチベーションアップにつながっているようである。  また、4年生に大学で一番よかったことを挙げてもらったら、その1位がインターンシップだったそうである。
これから主流になるかもしれないと感じた現代若衆宿や現代ビジネス学科の取り組み
現代ビジネス学科のようなことをやっている大学は他にもあるんですかと聞いてみると、「インターンシップの学会が2つほどあるのですが、どこも2週間程度のもので、半年におよぶインターンシップを行っているところはほとんどありません。ましてや必修科目になっているところはどこにもないので、学会ではいつも質問攻めに合います。」といわれた。アクションを起こしている大学は少ないが、関心は非常に高いようである。 
もしかしたら、長期間のインターンシップはなくても現代ビジネス学科のようなコースをつくっているところはあるのではないかとインターネットで調べてみると、安田女子大学にも2003年から現代ビジネス学部ができていて、「今、社会が求めているものは何か?これが現代ビジネス学部の原点です。」などと書いてあった。
 これから誰でも大学生になれるようになり、大学が学生に選ばれるようになる中で、学生を失うかもしれないという危機感の強い私立大学や女子大学が、学生のニーズを模索していろいろ動き始めているようである。久留米大学の現代若衆宿も来年度の整備に向けて動いている。こうした動きがさらに盛り上がるように「現代若衆宿サミット」などを開催して、お互いが連携していければ、なおいいのではないかと思った。

(ほんだ まさあき)



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