<よかネット>No.68 2004/3
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都市周辺の地域づくりと土地利用を考える
〜市街化調整区域と都市計画区域外で
起きている問題と対応〜
             山田 龍雄、本田 正明

 2000年の都市計画法の改正によって、次の3点が変更になった。@線引き制度を採用するかどうかは都道府県(大都市圏・政令都市以外)が選択できる、A従来、市街地調整区域内で開発が認められていた「既存宅地」制度が廃止される一方、市街地調整区域内で一定の要件に該当するエリアのうち都道府県が認める区域内であれば開発が認められる、B地方公共団体は、条例により開発許可基準を強化し、あるいは緩和することができる。

 この法改正を受け、各県では条例づくりを行っており、当社でも福岡県の「市街化調整区域のあり方検討委員会」や「開発許可基準の条例づくり」のお手伝いをする中で、県下で線引きしている都市の状況を改めて調査し、その土地利用のみではなく、土地利用政策から引き起こってきている地域づくりの面での様々な問題が浮かびあがった。

(土地利用の面) 

・既存宅地で田園風景になじまず、土地利用的にも無計画な建物が建てられている。

・調整区域内を通る広域的な道路整備に伴って沿道サービス施設の立地が進むことが、土地利用の混在を招き、また田園風景を阻害している。

・都市計画区域外でも利便性の高い地区では、道路や下水道が未整備のまま狭小な宅地開発が進み、地域の住環境が悪化している。

(農地の土地利用の面)

・農地に隣接して資材置き場が立地し、周辺部農地の作物への影響が懸念される。

・裏山などに産業廃棄物の投棄が行われ、農業用水や生活用水の汚染などの環境への影響が心配される。

・後継者がいなくなり、農地やミカン畑が放置されたままとなっている。

(集落環境の面)

・調整区域では原則、開発不可であるため、道路、下水道等のインフラ整備が遅れ、集落の過疎化、高齢化も進んできている。

・集落から若い人が減っており、草刈りなどの地域の共同作業や行事などが維持できなくなっている。

・調整区域と市街化区域とは線1本の内側が外側にあるだけで地価に大きな隔たりがあり、地権者にとって不公平感がある。

このような都市郊外部や調整区域の問題について、各地域の担当者に現状報告をしてもらい、参加者と一緒に議論してはどうかということで、今回のセミナーを企画し、2月18日(水曜日)に開催した。

 都市計画担当者には関心が高く、タイムリーなテーマであったためか、当日は応募者数よりも多い70名近い参加をいただいた。今回のセミナーは(NPO)日本都市計画家協会(以下「協会」)と(協同組合)地域づくり九州との共催で行ったのだが、第1部では協会の柳沢厚理事に、@明治以降からの都市計画のテーマの流れ、A都市計画法改正のポイント、B全国の条例づくりの狙いと概要を話していただいた。柳沢さんの話の中で、印象的であったことを紹介したい。

・これまでの土地利用のコントロール手法の考えは、都市化の圧力をどちらかというと力で抑えたきたが、これからは地域のアイデンティティーやコミュニティづくりといった視点で考えていく必要がある。

・郊外の環境こそが重要な地域資源であるという観点で、メリハリのある土地利用を行う必要がある。

・調整区域で、一定の開発を計画的に認めることが農地を計画的に残せることになる。

・今回の改正では、地域ごとの実状に応じて地域の都合のよい方向で法を使いこなすことが重要である。

・地区計画を立てる場合に、農政部局との調整が出てくるが、一般論はなく地域ごとで折り合いをつけることが大切。全国共通のルールはつくらない方がよい。

・浜松方式では、調整区域のほぼ全域を法34条8号の3の該当区域とし、地元で「土地利用協議会」を設立する。そして「土地利用協定」が締結された区域について条例区域にするといった、地元主体の緩やかな基準としている。しかし、これは地元の意志を尊重した投げかけ方式であるが、いざ具体的にやろうと思ったときには場所の設定が難しいという面をもっている。(浜松方式は、現在、志摩町で実施している土地利用方策に近い)

・長野県では、県の財産である美しい山林と田園を保全していくという県土全体の目標を達成するための土地利用のコントロールが必要である。等

引き続き第2部では、久留米市(荒木征洋氏:農政部)、佐賀市(池田剛氏:まちづくり推進課)、古賀市(中野敏明氏:都市計画課)、福岡県(柳原史郎氏:都市計画課)、志摩町(吉原邦彦氏:収入役)の5人のパネラーの方に地域の現状報告をしていただき、鵤心治先生(山口大学工学部感性デザイン科)にコーディネートしていただいた。

 各パネラーの方の印象的な意見は次のとおり。

〈久留米市の農村地域の問題について〉

・久留米の農地面積は3,250haあるが、平成2〜12年までの10年間で612haほど減っている。農家数も3,581戸あるが、10年間で976戸減っている。

・農家数の減少、高齢化などにより、農道や水路の管理、伝統行事の維持が難しくなってきている。

・やる気のある専業農家は収益の上がる農業に取り組むなど意識が高いが、後継者のいない兼業農家などは現状維持を目指す程度で、自分の農地が道路などの公共事業で買い上げてもらえないだろうか、などと期待している。

・農村地域にはたくさんの空き家があるが、地域の環境を乱されなくないという心配から、都市住民に貸そうという動きはない。

・これまで農振法(農業振興地域の整備に関する法 律)の運用では、都市近郊と純粋な農村地域で同じ基準で行われてきたが、無理が出てきている。

〈佐賀市の中心市街地と郊外の問題について〉

・中心市街地の衰退を防ぎ、活性化させるために定住人口、交流人口(通勤・通学)、観光客などをどうやって増やせばいいかを考えている。

・渋滞を緩和するために環状線が整備されることで、環状線沿いに中型の専門店、ショッピングセンターが張り付くようになり、市街地の中からも外からもそこに人が集まるようになり、中心市街地が衰退してしまった。

・市街地周辺部の農地を区画整理することで、市街地の人が移転していっている。

・佐賀市の周辺町村は線引きを行っておらず、交通アクセスも便利なので、佐賀市内の仕事を持ったまま、安い土地を求めて人口が流出してしまっている。

・人口が減っているにもかかわらず市街化区域が拡大しているため、人口密度が低下してしまっている。そのため、コンビニなどの様々な都市機能の維持が困難になってきている。

・佐賀市では、使い古されたキーワードとは言われているが、「コンパクトシティ」を目指さないといけない。

〈古賀市の都市計画区域外の問題について〉

・古賀市の都市計画区域外のある集落では、もともと37戸しかなかったが、現在800戸の大集落となっており、生活排水、道路など環境面で問題が出てきている。

・昭和50年当時、都市計画区域外の農家は、それほど開発が進展するとは思っていなく、人口増は集落の活力になると思っていた。しかし、ミカンの拡大経営がいき詰まり、多くの農家が借金をかかえ、この返済のため土地を手放さざるを得なかった。このため安価な住宅地が開発され、当時の戸建て住宅需要と相まって小規模開発が多発した。

・都市計画区域外が調整区域となると地価は1/10に下がってしまうが、農家の方の意向としては@農業では食っていけないので、農外収入が得られるような土地利用を望んでいる、A農地を守るために農家を守って欲しい、B安易に先祖伝来の土地を手放したいとは思っていないなどの要望がある。

・都市計画区域外を調整区域としていくためには、庁内が一致団結し、不退転の意志統一がないとできない事業である。現在、都市計画や農政課などを入れた庁内ワーキングチームを創っている。

・当面、戦略的には調整区域での地区計画を行って、都市計画区域外を調整区域にかけるときのモデルとしたい。全国いろいろ問い合わせたみたが、あまり例はなく、古賀市で事例を創ってみせるしかないと思っている。

〈福岡県の市街化調整区域の開発許可制度の条例及び運用基準案について〉

・県の都市整備では@コンパクトな都市づくり、A市街地と農地や自然環境とが調和するメリハリの効いた土地利用の形成が目標である。

・調整区域の基本的な考え方として@自然環境の保全、A田園・自然との調和ある土地利用、B地域の活力を活かした活力創出が3ポイントである。

・県においては、地区計画が望ましい方向であることを前提としながら、市街化区域から500m以内の区域を「市街化区域依存タイプ」として、一定の道路、上下水道等の基盤が整っているところについて開発を認める。(34条8の3)

・市街化区域より500m超えたところでは、都市計画マスタープランや調整区域の整備・保全計画などの上位計画に位置づけることを前提に@人口減少や少子高齢化等により、集落の活力が低下している集落で、コミュニティの維持及び活性化を目的とした開発、A一定の田園(市民農園)に近接した開発、B沿道周辺の一定の区域において、社会的ニーズや都市間移動に伴い必要とされる利便施設の開発を認める方向にある。(34条の8の4)

〈志摩町の田園居住のまちづくり〉

・平成14年2月に線引きを実施したが、10年を要した。バブル期に娯楽施設等の計画があがり、調整区域内の1/4が町外の所有者であった。

・調整区域にかける時には、一定の開発を認めるエリアを設定し、特別に12地区に地区計画指定をすることによって実現させた。

・調整区域の土地利用では4つの目標像(@身近な田園景観を守り育てる、A町の骨格となる自然「海」と「山」を保全する、B集落の生活環境とコミュニティを守り育てる、C豊かな自然環境と歴史あるコミュニティに根付いた力強い地域経済を育成する)を掲げているが、4番目については九大移転に伴う大学関連の施設をどのように配置するか課題である。

・農振農用地を指定しているが、耕作放棄地も増えており、どこが農用地が分からなくなっているものもある。現在、農振農用地を見直し中である。

・現在、浜松方式と同様に「まちづくり協議会」を立ち上げ、地区毎に具体的なまちづくり計画を作ってもらい、これを受けて地区計画指定を行うこととしている。

・地元の人たちに「将来のまちづくりを考えて下さい」といっていも考えることはできない。だいたい保全する地域と地区に来てもらっては困る施設ぐらいしかわからない。町内には41行政区があるため、まちづくり計画を策定するのは時間のかかる作業となる。

・土地利用計画といっても人が基本。人と行政とが一つの目標を持たないと実現できない。

・志摩町のまちづくりでは景観も大切な要素であり、「田園居住のまちづくり」で景観も創っていく必要がある。

 いずれにしても、郊外部の土地利用政策は地域ごとに問題は異なっており、模範回答というものはない。柳沢さんが話していたように法をうまく使いこなすといったスタンスが必要である。

 また、農地の耕作放棄地、集落の子ども達の減少や高齢化、田園景観などの地域ごとの生の意見や問題を出し合い、今の集落を住みやすい地域とするためにはどうしていけばよいのか、といった地域づくりの視点から土地利用を考えていくこと、このための地域独自の制度を創っていくことが必要であることを再認識させられたセミナーであった。  

(やまだ たつお、ほんだ まさあき) 



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