<よかネット>No.62 2003/3
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一歩外へ出ることが、本当の第一歩
〜稲築町職員のウォッチング〜
             伊藤 聡

●町職員の地区担当制を進めるため
稲築町は筑豊地域の旧産炭地域である。今は約2万人の町だが最盛期には4万人以上が住んでいた。基幹産業を失った旧産炭地域は依存体質が強いといわれている。住民は行政への依存、市町村も国や県への依存がある。このことは炭鉱会社の福利厚生が充実していたことと無関係ではないらしい。
住民の依存体質はときに一部の人の強い要望になり、それが続くと行政の方には住民とあまり深く関わりたくないという雰囲気が生まれ、行政と住民の間に距離ができてしまう。しかし、炭鉱閉山からもう40年になる。そろそろ変わらなくてはいけない。
稲築町では、2年前から行政職員と住民のまちづくり会議が開かれ、できることは自分たちでやる、自立した地域づくり、コミュニティづくりを進めていこうという構想が掲げられた。
そのために、町内会などの地域組織を中心として活性化しようと考えたが、まずは職員から行動を始めようということで、職員の地区担当制を進めることとした。平成15年度から動きはじめる予定である。全ての職員に地域参加の機会を持って欲しいとの想いから、全職員を27の町内会に振り分けるが、その後の行動はある程度自主性に任される。
この地区担当制を進める前に「地域をよく知るきっかけづくりが欲しい」という職員の意見から、2月1日にまちのウォッチングを行うこととなった。

●歴史と食とかっぱをテーマにコース分け
ウォッチングは「歴史・炭鉱コース」「食と買い物コース」「かっぱめぐりコース」の3つのコースに分かれた。職員には事前にコースごとに集まって、各自まわるルートを考えてもらった。
「歴史・炭鉱コース」は、1200年代に作られた五百羅漢、有名な歌が稲築三部作として残る山上憶良の万葉歌碑、炭鉱で実際に使っていた練習坑跡、完成間近の沖出古墳公園などをまわった。
「食と買い物コース」は、炭鉱時代に栄えた面影を残す商店街、市場のような隠れたスーパー、午前中で売り切れるまんじゅう屋、民間の農産物販売所等をまわった。この班はさすがに(ねらい通り?)若手の女性が多かった。
「かっぱめぐりコース」は、悪さをしたかっぱが結びつけられたという大樟、最近増えているかっぱの「なつきちゃん」の像等。このなつきちゃん(「いなつき」だから)は町のイメージキャラクターで、町民には結構浸透している。

●職員がまちかどで町民にインタビュー
はじめに簡単な体操とゲームをやって頭と体をほぐすのだが、これでその日の雰囲気が決まる。職員のワークショップ(若手から収入役まで参加)で地域理解のためなどと言っても、遊び心いっぱいでいいのだなという流れになれば、半分は成功といえる。この日は「爆弾ゲーム」でペースをつかんだ。
ウォッチングの途中では、街角でのインタビューを試みた。相手は班によって、通りがかりの高齢者か子どものどちらかを指定される。子どもに「稲築町は好き?」と聞くと「大好き」と答えが返ってきた。職員が危惧するより、みんなそこそこ心地よく暮らしているようだ。職員といえども、町民に声をかけるのは勇気がいったらしいが、本当は気軽に声を掛け合えるような関係が必要だ。
昼食もウォッチングのひとつの課題とした。自分のまちでおいしい店を知っているかどうかは結構重要なことだ。いざというとき友人などを案内することもできるし、まちにお金も落ちる。参加者は班ごとに事前に食べたい店を決めておいた。お好み焼き屋、焼き肉屋などに分かれたが、私の行った定食屋は客の9割がチャンポンを注文する店で、古い小さな店構えだが客足が途絶えることはなく、店主にインタビューするのも難しい状態だった。
各班戻ってきて、まとめを発表していて思ったのは、必ずしも明確な問題意識を持っていなくても、歩いてみてまわれば、良いところ気になるところは素直に見えてくるのだな、ということだった。共通認識するというだけでも意味がある。

●まちづくりの第一歩は文字通り一歩出ること
稲築町の職員は、現在約3割が町外在住である。町に縁もゆかりもないという人はそういないとは思うが、通勤距離が伸びることは、それを言い訳にすることはできないが、地域や住民との距離が離れる一因でもある。また、先に行った職員研修会でのアンケートで「まちづくりそのものが分からない」という意見が少なからずあった。まちへ一歩出る、という簡単な取り組みも、まちづくりの第一歩として、大きなステップになるように思えた。
地域の自立を促す、ということは将来的な目標ではあるが、ある意味、既に自治の組織として活動している町内会に対して言うにはおこがましい面もある。そこで、とりあえずの目標は職員が地域を知ること、地域住民に馴染むことにおいて地区担当制を進めることとした。これには、何でもするということで地域に入っていき、雑用係にされたり、要望ばかり言われたりしても困る、といった理由もある。しかし、地域を良く知るだけでも行政のサービス向上にはつながるだろう。
最初は、職員が担当となった町内会を訪問して、どんな地域なのか、どんな行事を行っているのかなどを取材する、いわば教えてもらう。それから、年間行事などにできるだけ参加する。1年間は職員の研修事業の一環としても位置づけている。
研修のあとは、地域の良き相談者として、あるいは地域づくりのパートナーとしての関係づくりができればよいと考えているが、少し今後の経過をみてからになることと思う。

●地域とつながる経験を積む
実はその一方で市町村の合併問題があり、先行きが流動的な中でどこまでの成果を目標とするのか、という課題もある。実際に合併するとなれば、時間はそう長くない。合併後の自治体に何がどの程度引き継がれるかは不透明である。しかし、合併して自治体が大きくなるほど、行政職員と住民は離れやすくなる可能性がある。その時に必要なのは職員が住民の声を聞く意識と行動、そして地域が自立できるようにしておくことだと思う。場合によっては職員も生き残りが必要となってくる中で、地域とつながる経験を積んでおくことは有効なことだろうと思われる。
今回のウォッチング、職員の参加は17名と、全職員の1割弱であったが、これを起点として輪を広げていければと思う。
(いとう さとし)









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