<よかネット>No.57 2002/05
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自然に産むということ

アクティブバースという言葉をご存じだろうか。妊婦が主体的に出産をする、という意味である。先日、我が家で2人目が産まれた。今では少数派となっている助産院でである。助産院というと、古いイメージで産婆さんが出てくる、といった様子を思い浮かべる人もいるかも知れないが、そこは若い助産婦さんが中心で、アットホームなところである。
アクティブバースとは全く同じ意味ではないが、「自然分娩」という言い方がある。「自然分娩」というのは、麻酔や会陰切開などの医療行為をせず、自分の力で産むことである。これに対し、現在ほとんどの人が行っている分娩台に乗って産む方法を「普通分娩」といっている。仰向けになって産むというのは、医師の診察及び介助のしやすさから来ているのであって、母体は背中や骨盤を圧迫され、赤ちゃんにとっても水平方向で出て来にくい不自然な体位だ。その助産院にはそもそも分娩台がない。日本でも長い間お産はしゃがんで産む座位が主流で、重力に逆らわずに産んでいた。その方が無理がない。名前に表れているとおり、今「普通だ」と言っていることは「自然ではない」ことなのである。
乳児死亡などの危険性から、病院での出産が主流になってきているのだが、栄養状態も衛生条件も良くなった中、助産院だからといってそのリスクが高くなるわけではない。かえって、病院の積極的な医療行為が事故やストレスを招いている場合があり、そのリスクの方が問題だし、後味が悪い。栄養を取りすぎて、きれいすぎて、子どもの免疫力が落ちている面もある。
 助産院では、バースプランといって、自分がどういう風に産みたいかのプランを立てる。そのことがまさにアクティブ、能動的な部分だ。どんな格好で産むか、リラックスできる音楽を流すか、香りを立てるか、へその緒を誰が切るかなど。我が家は、妻が水の中が好きなので水中出産を希望した。一人目の時も水中出産で、やや大きめの浴槽の様な中で産んだ。今回のバースプランの中に、実は「胎盤を食べる」という内容を入れた。最初、助産院から胎盤を食べると体(特に母体)にいいと聞いてきたときには、すごいことを言ってるなあと思ったのだが、だんだん興味がわいてきて、こんな体験普通ではできないので食べてみよう、ということになった。
胎盤にはいっぱい栄養が詰まっている。胎児はそこから全ての栄養を得ていたのだし。動物は貴重な栄養源でもあり、たいてい母親が食べるらしい。人間でも子宮の戻りがいいそうだ。まあ、男の私が食べても特別な意味はないと思うが。しかし、そのままだと、胎盤は産業廃棄物として処分されてしまう。勿体ないというのは変だが、何か悲しいではないか。
予定日(この言い方は好きではない。およその目安という程度)の5日前の早朝、陣痛らしき痛みから2時間、車で助産院に着いてから10分後というスピードで長女が誕生した。これも1日1時間の散歩で骨盤を柔軟にしていた成果だろう。だが、あまりの早さに水中出産用の浴槽にはお湯が半分しか貯まっておらず、水中出産は今回は未遂に終わった。結局マットの上に四つん這いという格好で、するりと産んだ。
数分後、胎盤が出てきて、私と4歳の長男でへその緒を切らせてもらった。直径15cm厚さ2cm位のその胎盤、助産婦さんが流しで洗って一部をまるで刺身をさばくように切ってくれた。これをしょうが醤油につけて口へ・・・・。柔らかいが少しサクサクしてる。臭みは全くない。しょうが醤油につけたせいかもしれないが、馬刺のような感じでもある。玄米菜食らしきことに挑戦していたのできれいだったのかも知れない。残りの胎盤は冷凍してとっており、後日調理できるそうだ。
アクティブバースは「おまかせ」ではないため、本人も周りも勉強することが必要だし、その助産院では食事や生活の指導などかなり厳しく鍛えられもするのだが、前向きな姿勢が影響するのか、産んだ後の子どもに対する親の愛情が違うそうだ。それに、不自然で有無を言わせぬ医療行為もなく、出産に対する印象はとてもいい。産むことに対して能動的な部分が少ないということが少子化の一つの原因になっているのではないかとも思う。
 このような話は、ついていけない人もいるし合わない人もいるので全ての人に薦めるつもりはないが、現在の出産のあり方に疑問を持つ人は、選択肢として知っておいて損はないだろう。
(いとう さとし)


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