<よかネット>No.57 2002/05
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たくさんの「暖かさ」に包まれた保育園
      〜滋賀県大津市 松の実保育園〜
                 梶原 里香

 「障害を持っていても自立した生活を送りたい」と願う障害者は多い。しかし障害者は就労の場を確保することが難しく、また就職できたとしても環境や人間関係で問題や悩みを抱えているひともいる。今回は働く障害者、働きたい障害者のサポートや情報交換拠点である「ジョブサポート」の所長・松本玲子さんにお話をうかがったのでご紹介したい。

 3月31日、滋賀県大津市の琵琶湖が見下ろせる場所に完成した「松の実保育園」の竣工式に出席しました。
 「たくさんの保育園の設計をしてこられた松井俊さんが自ら理事長を務める保育園」と糸乘から聞いていたこともあり、どんな保育園をつくられたのだろうかと、とても楽しみにしていました。
 松井さんは当社のネットワーク会社である樺n域計画建築研究所に勤務された後、現在は独立され保育園や福祉施設の設計を中心にお仕事をされています。また、奥さんの松井周さんは保育士で、松の実保育園の園長をされています。

●無認可保育園として誕生。立ち退き問題が認可保育 園として歩み出すきっかけとなる
 松の実保育園は1984年6月、産休明けから誰もが安心して預けられる保育園を目指して、無認可保育園として誕生しました。
 保育園は大津市の湖西地域(比叡山を挟んで京都と滋賀に別れている地域)にあります。電車で京都まで10分、大阪まで40分という近さのためベットタウンとなっており、大津市の中でも保育要求が高い地域となっていました。子どもを預けたいという保護者が多く訪ねて来られるものの、保育料の高さに預けることを断念して帰られる方が多かったため(大津市では無認可保育園に対しての補助がなく、保護者に対して0〜2歳まで2,000円/月の補助があるのみ)、無認可では保育園を必要としている人の要求に応えられないということを痛切に感じていたそうです。
 「子どもを預けたいという人の希望に応えたい」という思いにかられていた1998年8月、保育園の立ち退き問題(当時は民家を借りて保育園を運営していた)が起こったことが、「認可保育園をつくろう」という大きなきっかけとなりました。
 この問題が起こったとき「松の実が大変だ」と、在園児・卒園児の保護者、他園の保育士さん、地域の人たちなどたくさんの人が集まってくださったそうです。そして松の実保育園の認可を進めていくだけでなく、将来的にも保育園を見守り、育てていくことを目的とした「松の実を育てる会」が発足されました。この会の活動として、新しい保育園建設のための土地探し、資金集めを行ったほか、現在も保育園の状況を知らせるニュースの発行、地域交流を図る活動などを行っておられます。
 立ち退きという大きな問題が起こったとき、すぐさま多くの人が保育園を助けようとして集まったということに驚きました。これも「地域に開かれた、共に育ちあう、仲間を大切にする」という保育方針に共感する保護者や地域の人が多く、それをこれからも残していきたいという想いが行動に現れたのではないかと感じました。
 このような経過を経て2001年8月法人認可がおり、「社会福祉法人 唐崎福祉会」が誕生、そして2002年4月、定員45名の認可保育園としてスタートすることとなりました。


●保育園は子どもだけが育つ場ではない。広く地域に 開放して大人も育ちあう場として考える
 外から見た感じではまるで大きな民家のよう。園舎の床をはじめ、柱、靴箱などいたる所に使ってある木材(床には吉野杉を使っている)。玄関を入るとタンポポが描いてある大きな絵。その横には喫茶スペース。春にはタンポポが生える屋根。ランチルームには重厚な蔵の扉。茶室まである。「これが本当に保育園?」というのが、保育園を見たときの最初の印象でした。
 ランチルームは、奈良市にあった明治時代初期に建てられた蔵の扉や柱を移築してつくられたものです。古いものを大事にし、活かすことを考えてつくられている建物だなと話を聞きながら感じました。
 また、このランチルームや玄関横にある喫茶スペースは地域交流の場としても活用することを考えてつくられています。子どもたちに本物を見せる、聞かせる機会を持つということで、様々な演奏会などを開催することも考えておられるとのこと。実際、竣工式でも琴や太鼓、ジャズの演奏が行われていました。保育園は子どもだけではなく、大人や地域の人たちと一緒に育ちあっていける場としたい、とおっしゃっていた松井さんの思いがこの保育園にはいっぱいに詰まっているというのが伝わってきました。
 竣工式に続き、午後からは在園児、新園児、卒園児とその保護者、地域の人を対象としたお披露目会が開かれました。遊具に夢中になって遊んだり、園舎の中を走り回ったりする子どもたちの歓声が園内いっぱいに響き渡りはじめると「保育園なんだな」という実感がわいてきました。来園されていた保護者の人からは、「こんな保育園で園生活を送れる子どもたちは幸せだね」という言葉があちこちで聞かれました。


●「暖かい」という言葉がぴったりくる保育園
 帰りの新幹線の中でふと、松の実保育園には「暖かい」という言葉が本当にぴったりくるなと思いました。
 たくさんの木材が使われている園舎、たくさんの窓から差し込む太陽の光、子どもたちの笑顔とそれを見守る保護者の皆さん、保育園を見守り、一緒に育てていこうと取り組んでおられる「松の実を育てる会」や地域の方々、園の保育士さんなど。こういったたくさんの「暖かさ」に包まれている保育園やそこで園生活を送る園児さんたちが本当にうらやましくなってしまいました。
 帰り際にお話させていただいた松井周さんの、「この保育園は本当にたくさんの人の暖かさで支えられているんですよ」という言葉が今でも胸に残っています。               (かじはら りか)


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