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ある自治体のシルバーハウジングプロジェクト(国土交通省所管)の仕事をしているときに、はたして高齢者の居住施設というものが、どの程度あり、どのような役割になっているのかの概観を把握しておく必要があると思った。そこで、今回は、高齢者居住施設で、少し調べたものを整理し、私なりに疑問点や課題などを述べさせていただく。
●高齢者居住施設をまとめて、わかりやすく説明している本は少ない。
人生80年代で65歳以上を高齢者というのは、今では問題があると思うが、ここでは統計上、65歳以上を対象としてみている。65〜74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者としている。
我が国の65歳以上の高齢者は着実に増加しており、人口問題研究所の推計によると、2013年には3千万人を突破し、4人に1人が高齢者、2050年には3人に1人が高齢者になると予測されている。高齢者の予測は現実の方が上回っており、2050年より早く3人に1人の超高齢化時代を迎えることになるかも知れない。
また、高齢者の増加とともに高齢単身者も着実に増えており、昭和60年に約118万人であったのが、15年後の平成12年には約303万人と倍以上増えている。特に後期高齢者は3倍強の増加となっている。
高齢者の概ね8割は元気な高齢者といわれており、単身の高齢者が増えてくることを考えると、入居時期には元気な高齢者を対象とした「高齢者居住施設」のニーズは、益々高くなり、需要も増えるもの推察される。
そこで、現在、主に元気な高齢者を対象とした居住施設については国土交通省、厚生労働省サイドで様々な施設が創設されている。(図1、表1を参照)
これだけの高齢者の居住施設があるにもかかわらず、一般の本屋で、これらの施設を一同にまとめて、わかりやすく解説している本はまったく見あたらなかった。 有料老人ホームの選び方マニュアル本、施設一覧表など限定したものは用意されているが、国の制度にからんだ施設になると、興味をもって調べるか、専門的に携わっている人以外は、全く実情がわからないのではないだろうか。私も今回、いくらか勉強し、整理させていただいたおかげで、概観はつかめたものの、各施設毎のの詳細については、それぞれの専門の人に聞かないとわからない。高齢者という消費者の立場にたった場合には、全く不親切というほかないのが実態であるようだ。
●高齢者の居場所を示すまとまったデーターがない
高齢社会といわれ、これだけ多様な居住施設が紹介されているにもかかわらず、居住の面からみて高齢者がどこに居るのかを示すまとまったデーターがない。
居場所の数値としては、国勢調査ベースでみると3ヶ月以上同じ場所にいることとなっており、「住宅以外に居住している一般世帯」という大枠の数値しかなく、この詳細は記述されていない。
高齢者の居場所を示す数字は、今のところ下表に示すように各種資料を積み上げるしか方法がない。
ちなみに住宅以外とは次のように定義されている。「寄宿舎、寮など生計を共にしない単身者の集まりを居住させるための建物や、病院・学校・旅館・会社・
工場・事務所などの居住用でない建物」となっており、福祉系の施設は「住宅以外の施設」で分類され、国土交通省所管の施設は公的住宅関連の施設であるため、「住宅」に分類される。これでみると高齢者居住施設に住んでいると思われる高齢者は1%を満たない状況であり、全国の高齢者からみると、ほんのひとに
ぎりの人しか居住していないことになる。都市基盤整備公団でも、「グループホーム等供給支援制度」を創設し、通常の賃貸住宅にグループホームや元気な高齢者を住まわせるような住宅への支援を行っており、この施設では民間事業者以外にNPO法人などの事業参加も促している。
これまでは、高齢者居住施設の概要と数値的な把握を行ってきた。次に高齢者居住施設の中でシルバーハウジングや高齢者向け優良賃貸住宅などについて、私なりに感じている問題点や解決策などについて以下述べてみたい。
●シルバーハウジングは「宝くじ」に当たるようなものだという話
国土交通省の代表的な高齢者居住施設に「シルバーハウジング」というものがある。これは高齢者の居住の安定を図るという目的のため、昭和62年に創設された制度である。また、この制度では高齢者の安否確認や生活相談などの役割を担う生活援助員(LSA=ライフサポートアドバイザー)が、常駐あるいは派遣されることとなっており、この費用が厚生労働省の補助から支給されることとなっている。
このシルバー住宅は、昭和62年から平成13年3月末現在までの14年間で全国に479団地、13,702戸供給されている。 しかしながら、先進地事例ということで、今から5年前ごろ東京都のある区役所に視察に行ったとき、担当者の方が「東京都のように対象者が多い中で、このシルバーハウジングに入れる人は宝くじに当たるようなものである。これに入れるか、そうでないかでサービスに大きな差があるのです。」と言われたことは、今でも鮮明に覚えている。この言葉に示すように、これだけ高齢者が増えた中で、一部の人を対象としたシルバーハウジングはモデル的な位置づけから、団地内の高齢者全てが同じサービスを受けられるようにすることが求められている時代になっているように思う。 このことは制度創設時からの課題であったようだが、現実の高齢化の方が進んでおり、目標とする制度に追いついていないの実情のようだ。ちなみに公営住宅に居住する世帯主年齢の割合をみると、公営住宅居住者の総数では約23%が高齢者が世帯主であるが、単身世帯では約5割弱、夫婦世帯では約4割となっている。昭和30年代〜昭和40年代初頭に建てられた古い公営住宅では、高齢者世帯の率はさらに高いものと推察される。今、お手伝いしている自治体での建て替え対象団地では入居者の60歳以上が7割、75歳以上が3割といった超高齢化団地なのである。もう、一部の高齢者へのサービスの時代ではないことは明らかにである。
このような状況においてシルバーハウジングをモデル的な位置づけから高齢者全ての世帯が同じようなサービスを受けれるようにしていくため、次のような提案をしたい。
○少人数向けの住宅には全て緊急通報システムができるように通信の配管のみは整備しておく。将来、シルバー住宅以外の世帯でも必要に応じて設備ができるようにしておく。その工事にともなう費用は受益者負担とする。
○LSAの人数は、「高齢者等概ね30人に1人」とするのが基準となっている。確かにLSA1人に対して30人のお世話をするのは大変と思う。しかし、何人かのLSAの方に聞くと、高齢者の方が新しい設備に不慣れでいろいろと操作ができない、あるは緊急ボタンの誤報など、最初のころは混乱するらしい。しかし、3ヶ月もすることには、使い方にも慣れ、少し落ち着くらしい。
そこで、このような初期段階やサービスする人数が増えるに従って、LSAの人員も柔軟に調整できるように、介護支援センターや他の福祉施設の介護パートの方の協力なども想定しておいてはどうであろうか。
○ある有料老人ホームに視察に行った時の話であるが、この施設では、高齢者の自立を促すため、高齢者が変に甘えないようにふとんの上げ下ろしなど細かいサービスまでもが受益者負担となっていた。このような受益者負担とすると、高齢者の方は病気になったときなど、本当に必要なとき以外は頼まないようになるし、かえって緊張感を促し健康にも良いとのことであった。この有料老人ホームまでもいかなくても、ある程度受益者負担としてLSAの方の負担を軽減することも考えられる。これは、入居当初段階に主旨とサービス料金表を説明すれば、納得していただけると思う。
○団体で居住することは、ある程度機械設備に頼らないとはいけないと思うが、お互いに見守るといった観点でみると、本当に重要なのは居住している人同士の付き合いの度合いではないだろうか。日常的な付き合いの度合いが強いと「あのおばあちゃんが最近出てこないが、どうしたのか」などをお互いに気遣うこととなり、これ自体が安否確認となるのである。まとまりの良い住宅団地では良く行われていることではあるが、日常的な付き合いを増やすために団地内でのイベント活動をしている。
そこで、LSA、自治会、役所の方などが一緒になって季節毎のイベント(正月祝い、ひな祭り、七夕、盆踊り大会、運動会、餅つきなど)を行うことが、団地内見守り度合いを高めることとなる。
●新型ケアハウスは高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)と競合するのではないか。
平成13年度の補正予算で自治体が賃貸を前提にしたケアハウスを買い上げる方式をとる場合に、その買い上げ費用に対して整備費補助を行うといった新型ケアハウスというものを創設された。
従来型のケアハウスの事業体が、社会福祉法人、医療法人、地方公共団体に限定されていたのが、このケアハウスでは株式会社やNPOも事業参加できることとなっており、間口が広くなっているのが特徴である。 また、介護保険法の「特定施設入居者生活介護」の指定を受け、特別養護老人ホーム同様に介護サービスを受けることができ、対象者が要介護1以上で、それより重い介護者でも入居者可能となっている。従来のケアハウスがある程度自立を原則としていたのとは異なり、将来の介護の不安のリスクも少ない。
一方、高優賃は元気高齢者を対象としており、バリアフリーや緊急通報システムなどのハード面の設備と必要に応じてLSA派遣があるといったことで、要介護となると、施設内での介護施設はなく、在宅介護を受けるか、他の福祉施設への転居となってしまう。
このように将来の介護などの不安を考えると、この新型ケアハウスは、高優賃より安心できる施設のようであり、高優賃供給の意義がよくわからなくなってくる。新型ケアハウスについては、再度詳細を把握し、動向を見守ってきたいと思っている
以上、雑然と高齢者居住施設について述べてきたが、次回以降は、高優賃や新型ケアハウスなどの実際の取材を重ね、その特徴や問題などを深めていきたいと思う。
(やまだ たつお)
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