<よかネット>No.56 2002/03
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「情報銀行」はまちづくりの拠点
  〜地域コミュニティづくりの取り組みC〜
                梶原 里香

 「住民参加型のまちづくり」という言葉はよく耳にする。しかし、実際に住民を巻き込んだまちづくりを進めていく場合、どのように仕掛けるのか、誰が引っ張っていくのかなど問題は多くある。
 今回はまちづくりに関する情報の拠点を設け、住民と行政が相互の情報発信に取り組んでいる熊本県宮原町の取り組みを紹介したい。

●「まちづくり情報銀行」の開設
 宮原町は熊本市から南へ約32km、八代市の北側に位置している。人口約5千人、面積は9.89kuと熊本県内で最も面積の狭い町である。
 役場の向かいには、住民参加のまちづくりの拠点となる「まちづくり情報銀行」があり、企画調整課職員が常駐している。
 このまちづくり情報銀行は大正14年建設の旧井芹銀行本店(その後肥後銀行宮原支店)の建物を町が買い取り、改修・増築して利用している。平成7年に始まった総合計画策定の過程を住民にオープンにし、誰でもその内容を知ることのできる拠点として、また住民の持つ地域の情報やアイデアを集め、総合計画に反映させることを目的として開設された。
 また、住民のサロンとしての機能も持っており、来訪者にポラロイドインタビューとして写真を撮って一言書いてもらい、その写真を張り出すということで人と情報が集まるしかけを行った。今でも、町民同士が世間話やまちづくりに関する情報交換を行う場所となっている。

●14の地区を支店として位置づけ、支店長をおく
 平成8年度からは町内の14地区をまちづくり情報銀行の「支店」として位置づけ、各支店に「支店長」や「次長」、また、行員ともいうべき「まちづくり推進員」(14地区で約130人)を置いている。
 この支店長やまちづくり推進員は各区の区長の推薦などで選ばれており、地区のまちづくりの運営の中心となる人たちである。とはいえ最初から支店長やまちづくり推進員になる人がいたわけではない。総合計画の中で「地区別計画」を策定しているのだが、この計画を住民と一緒に作っていく中からリーダーが育ったのである。支店長の年齢は30〜60歳代と幅広い。
 各支店では各地区のまちづくり推進員の会議である「支店会議」、地区住民を対象とした「地区会議」を開いている。この会議では総合計画の「地区別計画」にもとづいて、各支店での年間事業計画とそれに必要な予算を作成することになる。
 また、各支店には役場の地区担当職員が2名ずついる(任期2年)。担当職員は支店会議への出席、支店へのサポート、情報提供などを行っている。
 宮原町には既存の地域組織として25の行政区があり、それぞれに区長がいる。支店は14地区なので1〜2行政区(最大は4行政区)に1つの支店が置かれていることになる。これまでの区長だけでは新たな地域づくりはできないとの判断から、支店長をおくことにしたのだが、地域組織のトップは区長であることに変わりはないという体制をとったため、スムーズに設置できたようだ。役割についても、区長は住民からの要望や苦情への対処、支店長はこれから先のまちづくりの推進を担うというように分担されている。年間事業計画は区ではなく支店ごとに作られるのだが、区長との密接な連絡が必要となり、区長の了解の上で作成される。

●支店長会議で各支店への補助金支給額を決める
 14地区の支店長は年に5回程度開催される「支店長会議」に出席する。この会議ではお互いの地区の情報や活動について報告するのだが、会議で悩みが出てもうまく活動している支店がアドバイスするなど、お互いに助けあうことができる。
 また、支店長会議では各支店が立てた年間事業計画について議論し、その補助金に関する審査を行っている。各支店への補助金は「支店経営補助金制度」に基づいて支給される。
 この制度は、地区でどのような取り組みを行うか検討するための支援で、事務費・会議費などに活用できる「行動計画策定支援費」と、行動計画に基づく具体的な取り組みに対する支援で(複数の支店の連携に対する支援も可能)、講師謝礼・研修旅費・啓発費などに活用できる「地区別計画推進支援費」からなっている。この制度への町からの補助金は総額で350万円。年に3回(5月、9月、12月)申請書を提出する。
 各支店から出された事業計画とその補助金については必ず支店長会議で審査が行われ(最終的な決定は町長が行う)、この審査を通ったものだけに補助金がでる仕組みになっている。支店長が互いの計画の内容を審査するため、それぞれの計画に立ち入った指摘を行うこともある。
 このような補助金決定の方法を採用しているのは、「活動の主役はあくまでも住民である」という考えに基づくものである。また、これで決定された各地区の事業については、地区住民で計画し行うことを決めた事業であるから、住民が愛着を持って活動に参加しているという。
 特徴的なものを1つ紹介する。下宮地区にある「はまどん公園」は、地区公園の必要性が住民から訴えられ、用地の選定から企画・設計、管理に至るまで地区住民主体で行われた公園である。その話し合いには子どもも参加して、どんな遊具が欲しいかなどの意見を聞いている。

●各地区の温度差は無理に縮めない
 町内で同じ時期に活動を始めたとはいえ、熱気がさらに高まっている地区と、薄れかけてきた地区など温度差はある。しかし、行政はその温度差を無理に縮めるようなことはせず、それぞれの地区が盛り上がるまで待つ、という姿勢を貫いている。
 「住民参加、住民主体」といっても、きっかけは行政職員の意識改革にあった。約10年前に数名の職員が集まって話をしたことから始まり、今では地区担当職員28名に対して50名が希望するというまでに盛り上がりをみせている。行政が地域の要望に直接応えるだけではなく、地域住民の自己解決能力を高めていく、そのための取り組みを惜しまない。これも、これからの行政の大きな役割だろう。   (かじはら りか)


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