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●「昔炭鉱、今行政」の依存体質
地方分権、住民主体と言われているが、住民の行政に対する依存体質は根深いものがある。隣近所の問題を自己解決せず、役場に持ち込んでくる。特に旧産炭地域ではその傾向が強いと言われている。
その体質を「昔炭鉱、今行政」と表現する人もいる。昔石炭産業が盛んだった頃、炭鉱で働き炭鉱住宅に住む人は、風呂も電気もタダ、電球が切れても取り替えてくれるなど、炭鉱会社に言えば何でも面倒を見てもらえた。そのくらい福利厚生が充実していた。それは一方で、住民として自立する必要性が薄れていくことにもなった。石炭産業が衰退し地域産業がなくなった後、依存する相手が炭鉱会社から行政になっただけでその体質は変わらず、あるいは強くなり、それが今も続いている。そういった意味である。
依存体質は何も住民だけではなく、市町村も国の補助金等に依存し、自立したまちづくりを怠ってきた面がある。
旧産炭地域の特性が残り、依存体質が強い中で、住民自治のための地域コミュニティ組織づくりを進めているまちがある。福岡県頴田町である。
●地区のカルテづくりから計画へ
頴田町は筑豊地域の飯塚市と直方市に挟まれた位置にあり、人口約7千人、面積は16kuの町である。
経緯から説明すると、平成3年に住民との対話を唱った町長が通り、平成5年ごろ本当の住民参加を進めるためのシステムづくりを町の総務課に指示したところから動きが始まっている。事例研究や組織体制の提案など行政内での準備期間を約1年で行い、平成6年度に34の町内会全てをまわって「行政・まちづくり懇談会」を開き、全町内会の賛同を概ね得た。
平成7年度には「町内会まちづくり計画」が町内会ごとに作成され、平成8年度から実質的に動き出すことになった。平成9年度には「まちづくり協議会」が設置され、町内会と行政の協議の場が整った。平成12年度にはそれまでの町内会を廃止し、自治公民館制へ移行している。
現在できている「まちづくりシステム」は、次のようなものである(図1)。
まず、自治公民館自ら地域の問題点や課題を調査し、「いいもの、嫌いなもの、必要なもの」に分類する「自治公民館カルテ」を作成する。
次に、カルテを基に自治公民館の目指す将来像、整備テーマ、活動の展開をまとめた「自治公民館づくり計画」を作成する。
さらに、それらを受けて自治公民館と行政が協議・調整の上「年度別実施計画」を作成し、行政に反映させる。
また、役場職員を自治公民館活動のアシスタントとして派遣する「担当課制」をとっている。
町から自治公民館へは年20万円の助成があり、宗教活動と飲食以外には自由に使って良い。宗教活動といっても氏神様は地域の伝統として可である。
●システム化することによって継続される
この中の「自治公民館づくり計画」をみると、これがなかなか良くできている(図2)。地区ごとのテーマと具体的目標の次に「自治公民館で実施すること」「行政へ要望すること」という欄があり、自分たちでできることは何か、行政へお願いしなければできないことは何かを、自治公民館ごとに検討された結果が出てきている。そして、一番右の欄は「行政の回答・調整」として、要望に対する回答が担当課からなされている。地域づくりを進める主体を地域(自治公民館)に置き、行政はそのサポートをしているという関係がよく分かる。
これがシステム化されていることによって、住民や議員などが直接役場に来て要望を出しても、「地域で話し合いましたか」の一言で歯止めがかけられる。役場職員にとっては不定期に来る住民対応の負担が軽減されたことも大きいし、地域で声の大きい人の要望だけが通る不公平感がなくなるのも効果的だ。
システム化すること、つまり仕組みを作ることは、継続のための必要条件である。他の町でも、いいリーダーがいて活発な活動が進められている地区があったが、リーダーが代わったら元に戻ってしまったという例がある。今のリーダーがいなくなっても周りの人で引き継いでいけるようにするには、システムを作っておくことが重要である。
自治公民館の組織は、責任が大きく、仕事も多くなる公民館長を支えるため、活性化部、生涯学習部、保健・体育部、環境部の各専門部と専門部長を置いている。この専門部会が様々な企画の提言等を行っている。
●学校の教師も地域組織のメンバーに
教育部門の組織として「教育会議」が各自治公民館にある。頴田町では、数年前まで中学生の非行がニュースになるなど子どもが荒れていて、教育をどうにかしたい、という思いがあった。対症療法でなく、行政・住民の日常的な活動の中で子どもを育てたい、とのことから、教育会議を組織化することとなった。
教育会議の構成員は、自治公民館長、副館長、小・中学校保護者、小・中学校担当教師、行政職員等が入っており、年3回の会議を開いている。ここで注目できるのは、学校の教師が地域の組織に入っていることである。一般的に、学校の組織あるいは教師は閉鎖的なことが多く、学校行事の方が優先され、なかなか地域との協力体制がつくれない。地域行事の衰退を招いているのは学校ではないか、と思えるほどだ。現場の教師からは、地域組織にはいることに対して最初かなり反対があったようだが、管理職のリード等もあり、今は地区の担当教師が割り当てられている。
さらに、子どもたちのボランティア活動を進めるため各地域に「地域生徒会」まででき、これは学校の生徒会の中にも位置づけられている。
ただし、頴田町は小・中学校とも町内に1校ずつであるという条件は、これらに有利に働いただろうと考えられる。
●誰が何をするのか示された教育計画
地域の教育に関しては「教育環境づくり計画」が自治公民館ごとに作られる。この内容をみると、「めざすこと」の次に、「自治公民館」「家庭」「学校または行政との連携」に分けてとりくみが書かれている(図3)。つまり、誰が、何をする、ということが明記されているのである。ここまでくれば、すぐにでも行動に移せるきめ細かい計画と言えるだろう。
教育への取り組みの効果としては、地域教育力のあるところは家庭教育もしっかりしてきて、子どもの非行も少なく、悪い子どもの影響も受けにくい、ということである。できるだけ早い時期(就学前など)に教育に取り組む方が効果的なようだ。
●自治公民館制度への移行
町内会を廃止して自治公民館制度に移行したことは、宮崎県綾町の事例を参考にしている。町内会長等の反対はかなり強いかと思われたが、すでに公民館長との兼任が1/3いたことや、それも含めて約2/3の人が町内会長から公民館長になったため、割とすんなり移行したようである。
行政と地域の窓口も、当初は総務課と町内会長であったが、公民館制度への移行もあって担当課は社会教育課になっている。これは生涯学習活動との関係で発展性があるという見通しもあるようだ。
頴田町ではこれらのシステムを作ることにより、いろんな人が地域の中で得意なことを活かして役割を果たすようになり、地域の伝統行事が復活したり、子どもの参加も増えたりしている。
依存体質が強いと言われる市町村の中でも、自治・自立への模索をしている町内会や活動団体はある。それが根付かないのは、楽な方法を知っている人の声に押されたり、受け皿がなかったりしているだけなのだ。行政と地域が連携できる体制づくりを進めれば、依存体質も改善されることだろう。
(いとう さとし)
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