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宮之城町は、鹿児島県の西北部、川内川の中流域に位置する町である。人口は約1万8千人弱ではあるが、中心市街地には商店街や病院などが数多く集積し、北薩摩地域の中心的な役割を担っている。鹿児島空港から車で約40分と近く、また、南は鹿児島市方面、北は出水市方面、西は川内市方面への道路が街中で交差しており、交通の要所にもなっている。この町は、竹林面積が約633haと広く、中でも孟宗竹林の面積は524haと日本一だそうだ。
宮之城町には江戸末期に発見された温泉地があり、明治36年頃には、既に温泉宿が10件あったとされ、現在でも9つの旅館が営業している。
昭和58年には、この竹特産品を活かした町おこしをしようという商工会青年部の奮起が発端となって「みやんじょうチクリン村」が結成され、その後の活動によって、今では宮之城町=竹林の町というイメージが出来上がっている。町中を走る幹線道路には街路樹ならぬ街路竹が植えられており、さらに町のイメージを景観面でも創りだしている。
この「チクリン村」と併せて、もう一つ宮之城町で積極的に取り組んできたのが、スポーツ合宿の誘致であり、年間2,500人前後の合宿人口を呼び込んでいる。そこで、このスポーツ合宿誘致のいきさつとどのようなシステムで運営しているかなどを担当の商工観光課の方にお聞きした。
●合宿誘致成功は人的交流、温泉地であることが大きい
合宿誘致のきっかけは、高校の監督やコーチなどの人的交流とお互い交流試合によって強くなれるといった、まったく当たり前のことであった。
・昭和60年頃、鹿児島商工の野球部や鹿児島実業のサッカー部の監督やコーチとの交流があり、これをきっかけに宮之城町で交流試合も兼ねた合宿をしていた。宮之城高校も当時はラグビーが強く、県大会は常連であった。
・今のように「スポーツコンベンション」という打ち出しはしていなかったが、この当時から少しずつ町も高校、大学の部活誘致を図っていた。
・宮之城町の温泉地は、最盛期には約10万人の宿泊客があったが、年々宿泊客は減っており、昨年は約2万7千人であった。合宿誘致は、温泉地の活性化がもう一つのネライでもあった。
・平成4年の総合体育館の完成、平成5年のがぐや姫グランド完成に伴い、平成5年に教育委員会が窓口となって正式に合宿誘致を行政として応援する体制づくりをした。この当時、日大ラグビー部のコーチが宮之城町の出身でもあったことから、ラグビーの合宿誘致も図り、今では高校ラグビー合宿だけでも県内外20校600人以上の参加がある。
・ラグビーの話しでは、町にある日本特殊工業(株)の工場長が神戸製鋼との付き合いがあった関係で、昨年と今年の2年続けて、神戸製鋼のコーチが日本特殊工業のラグビーの指導に来ている。
・現在、ラグビー、バレー、サッカー、水泳などで90 〜100校、約2,100〜2,600人が宮之城町を毎年訪れて いる。
下記の図では、平成8年ごろからラグビーやバレー以外の「その他」が増えてきているが、その中味は陸上、バスケット、ソフトボールなど、種類も多くなっている。参加校の数と人数は、あくまで町を通して申し込んだ分であり、町を通さず先生同士のネットで直接参加している学校もあるらしく、実際の参加人数はつかんでいない。
●学校の先生の協力なしでは、運営はできない
これだけの参加校、参加人数に対して、どのようにグランド、体育館、宿泊先などの煩雑な手配をしているのかが気になったので聞いてみた。
「受付は町がやり、あとはスポーツの種類毎に担当の先生がおり、その先生に連絡すると、町内の先生同士で話し合い、日程からグランドや体育館の調整、宿泊先の手配をすることになっている。」とのこと。
役場も、先生の協力なしではこのような運営ができないらしく、長年の実績から生まれた町内外の先生同士のネットワークが大きな役割を担っている。
町が作っているスポーツコンベンションのパンフレットをみると、体育施設や宿泊施設はもちろんのこと、氷販売店、スポーツ店、弁当業者、医療機関、薬局、コインランドリー、公衆浴場など、合宿する上で必要な施設を紹介している。
●合宿誘致から波及する経済効果は?
ここで2,500人の参加人数、平均3日間という設定でその合宿から波及する直接的な次経済効果を単純に算出してみた。少々大雑把であるが、あえて数値を出してみた。なお、スポーツ合宿での使用する施設使用料は無料にしている。
旅館や仕出し屋などで町内で材料を仕入れているのであれば、さらに第2次波及効果が出てくるのであろうが、その割合がわからないので、ここでは割愛させていただく。
○旅館・宿泊
実際に旅館に泊まるのはラグビーとバレーぐらいで、他は公民館に宿泊とのこと。
(旅館宿泊)
1,500人×3日×5,000円/泊・2食=22,500千円
○弁当・昼の食事
2,500人×3日×500円/日=3,750千円
毎年、何かの大会があり、この参加者への弁当が出されている。
2,000人×2日×500円/日=2,000千円
○氷代
100校×3日×1,000円程度=300千円
○その他 個人の小遣い
2,500人×3日×500円/日=3,750千円
計 32,300千円
直接の経済効果は約3千万円程度ありそうだ。これに、先生同士の交流会や材料の町内仕入れ、ガソリン代、コインランドリー代などを入れると、もっと町にお金が落ちていると考えられる。
スポーツ合宿での経済効果は温泉地の宿泊売上げ概ね2億7千万円(昨年の宿泊客実績の27,000人×1万円)の1/10程度と決して大きくはないが、町のイメージアップと宿泊客が減る夏場の売上げに貢献している。この辺の効果については、詳しく研究してみても面白いのではないかと思う。
●今後はカルチャーコンベンションを目指す
宮之城町のもう一つの自慢が、吹奏楽団が全国でもトップレベルを維持してきていることである。
一般の部では16年間指導している先生の力もあり、全国大会の常連である。また、中学の部でも九州大会はほとんど出場という伝統をもっている。一般の部のメンバーは、遠くは福岡から月に1回程度来ている人もいるらしく、人口1万8千人弱の町であっても全国のトップレベルという力が、関係する人を吸引しているようだ。
このように吹奏楽団のレベルが高いこともあって、最近では福岡工業大学の吹奏楽団が合宿に来ている。
これから町では、単にスポーツだけではなく、カルチャーコンベンションにも力を入れ、交流人口の増加を目指している。
宮之城町には、町外から柿酢やわらじといった町で生産していないようないろいろな特産品の問い合わせが多くあるらしく、役場に連絡すれば何でも手に入るような印象をもたれている。
このように、チクリン村や合宿誘致あたりの外へ向けた取り組みが、町のイメージアップやPRに大きな効果となっているようだ。
(やまだ たつお)
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