<よかネット>No.53 2001/09
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地域コミュニティをめぐる現状と問題
〜地域コミュニティづくりの取り組みA〜

地域組織の形成、地域コミュニティの形成についてどういうことに困っているか、何が問題かという部分を、福岡県O町での調査事例を参考に整理したい。
■古い開発団地は農村集落より高齢化率が高い
O町は人口約3万人のベッドタウンであるが、古くからの農村地域や漁業集落もある。自治区の数は54区あり、最も大きい区は723世帯2,290人、最も小さい区は29世帯65人、平均的には約190世帯560人である。O町では区および区長という呼び方をしているので、以下それに従う。
高齢化率をみると、最も高いところでは44.0%、次に40.6%という区があるが、これらはいずれも昭和40年代に開発された住宅団地の中の区である。農漁村地域でも高齢化率は確かに高くなっているが、それでも30%前後であり、同年代が集中する開発団地ほど極端な高さは示していない。ちなみに高齢化率の低い方は、5%未満の区が3つあり、これはここ数年以内に開発された住宅団地の区である。
■長期政権と持ち回りの一長一短
区長にアンケートを取った結果では、区長の年齢は60〜64歳が17%、65〜69歳が50%と60歳代が3分の2を占め、退職後間もない人たちが区長を務めるケースがかなり多いと分かる。残りのうち24%は70歳以上である。区長に限らず、役員等も含めてだが、後継者の確保には苦労している区が多いようであり、「後継者がいない」と答えた区が3割あった。高齢化率の高い地区では、実質的に動く体力のある人が減り、活動が滞りつつある区もあれば、新しくできた団地ではほとんどの人が仕事も現役で、地域の役員等に関われる人が少ないという区もある。
区長は本来、ある程度民主的な選出の仕方をするべきではないかと思うのだが、体制の不十分さややる気のある人の不足などから、同じ人が長く区長を務める長期政権化や、区の中の組などで1〜2年で持ち回りする当番制が多くみられるようになっている。
長期政権も当番制も一長一短ではある。長期に区長を務める場合、区長が地域の実情を良く把握し、方針を持って自立運営を行えば、地域は安定してかつ活発な地域活動を展開することができるが、一方で権力が増大して地域住民が意見しにくくなったり、行政や議会と対立的になったりすることがある。
持ち回りの当番制の場合、様々な人が地域活動に関わるきっかけを与え、人材の発掘などにつながる可能性があるが、たいていの場合、引き継ぎをしていく間に役割が縮小される。地域の人々の意見を聞く、あるいは対策を考えるといった、ある程度の能力を要する役割は当番制の性格上継承されにくく、回覧板を回すなどの文書事務的な役割だけが残っていく。事務的なことだけでも区長は相当忙しいという声も根強く、地域の自立を図る上では行政側にも事務委託の部分を見直す必要も出てくると考えられる。なにか、地方自治体における機関委任事務と似たような構図が感じられる。
区長の役割継承とレベルアップのためには、行政か区長会のようなところでの研修なども必要になってくるだろう。
■「地域型」と「機能型」の活動
区の中には老人会、婦人会、子ども会などの様々な団体がある。一方で、文化活動団体や子育てサークルなど、区をまたいであるいは区の単位とは関係なく、目的に応じて集まり、自分たちの好きな活動や必要な活動をしている団体がある。
これまでの地域活動が縮小してきた背景のひとつには、地縁にしばられた活動や義務が発生して、その堅苦しさや煩わしさが敬遠されるようになった、ということがある。だから、コミュニティの活性化を昔のような地縁活動に戻そうというのには無理がある。いろんな人が参加しやすく、活発な活動が展開されて地域の自立が進むためには、区などの地域住民全体を対象とした活動と、区を超えて目的を重視する活動と両方が必要である。O町の担当者はこれを「地域型ボランティア」と「機能型ボランティア」として整理していた。ボランティアとは言い切れない面もあるので「地域型活動」「機能型活動」(あるいは活動団体)とすると、地域型活動が機能型活動をうまくとりこみ、ネットワークしていくことがコミュニティの活性化につながると考えられる。
例えば少子化の進む地区では、子育て世帯が少なく、子育て支援サークルなどが区の中で結成できないところがある。そのような場合でも、いくつかの区(隣の区でもそうでなくても良い)の住民が連携して子育て世帯が集まり、サークルを作ることができる。このように機能型活動は地域型活動を補完していく関係になりうる。
■ひとづくりを活かす組織とフィールド
もうひとつ、別の視点から述べると、O町では「ひとづくりからまちづくりへ」ということで生涯学習のまちづくりを進めてきた。いろんな講座や文化サークルなどの学習活動が活発になることで、町民の意識や能力は高まってきた。しかし、それがまちづくりにつながっているかと言えば、はっきり見えてこない面がある。楽しいことがあるというだけでなく、住みやすい地域になった、という部分につながらなければ、まちづくりというレベルとは言えないと思う。
例えば、地域リーダー育成の講座を受けた人たちは、卒業してもなかなか活躍する場がない。活躍する場にあたるのは、何らかの「組織」と「フィールド」であると思われるが、その両方を持つもののひとつとして自治区がある。そこが地域の人材の活躍の場になっていれば、地域の活性化につながりやすい。
生涯学習などを通じて住みやすくなるということは、一人ひとりの能力が高まるだけではなく、周囲の人とのつながりに活かされるかどうか、あるいは福祉的な面を持つかどうかにかかっている。都市部だけでなく農村でもみられる緊張感でつながる近隣関係が安心感へ変わっていくと、少しは住みやすくなる。隣近所と仲良くなるには、市町村単位ではやや広すぎ、もう少し身近な範囲での地域活動が展開される必要がある。それは例えば、地域で行う文化講座だったり、スポーツだったり、清掃活動だったり、高齢者の見まわり活動だったりする。
■市町村合併の視点から
ところで、現在各地で進められている市町村合併からみても、自治会を始めとするコミュニティ組織を強化し、自立する力をつけておけば、自治体の規模がどう変わろうとも、役場が遠くなったとしても、地域の人たちは暮らし安さや安心感を維持していける。もし合併すれば、現在の市町村はなくなるが、自治会などの組織は多分そのまま続いていく。合併という大きなくくりの論議が起こっている今だから、余計コミュニティなどの小さなくくりを考える必要があるのではないだろうか。
(いとう さとし)


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