<よかネット>No.52 2001/07
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安全でおいしい卵は高くても需要がある   
   〜専業農家大いに語る。 第2回

 4月19日、「専業農家大いに語る会」の第2回会合がもたれた。今回お話しをして下さったのは、距ホの農園、代表早瀬憲太郎さん。糸島半島の志摩町で、直売店を併せ持つ養鶏場を経営している。卵の名は「つまんでご卵」。なんだかかわいくて、心をくすぐられるこのネーミングと、早瀬さんの卵に対する熱い思いに引き込まれてしまった。以下お話をまとめてみた。
●養鶏を始めるきっかけ
・もともと鶏が好きだった。大学の農学部で学んでいたころ、稲の育種を研究して、鶏も勉強した。卒業後は3年間漫画家をしてこのままプロを続けることも考えたが、その後、高校の理科の先生を経て、アメリカからハイラインという品種の鶏を輸入し販売する総合商社に入社した。
・ここは鶏だけでなく、畜産に与えるワクチンや、鶏舎の設備も扱う養鶏産業の草分けで、仕事で日本各地の養鶏を始めとする畜産産業を見て回ることができた。この頃、自分は卵を食べようとは思わなかった。冬場になると人間が風邪を引くように、鶏もウィルス性の風邪を引く。それが広がらないように抗生物質の投与を続けるため、鶏は薬漬けになる。耐性菌は約1カ月でできるし、更に強いウイルスが現れてしまい、ウイルスとのイタチごっこになってしまう。ある養鶏場の主人はいくら自分のところの卵が余っていても薬漬けだということを知っているので食べないという。そうしたこともあり、卵は自分の目で見て信頼のおける養鶏場から直接購入していた。
・38歳の時、腎臓病にかかり、人工透析を受けることになった。会社はポストを用意してくれるといってくれたが、自分がやりたいことは何かと考えたときもともと鶏が好きで、鶏が飼いたかったのだということに気づく。定年後にと描いていた夢だったが、今がチャンスと思って実行することにした。
●最初は道楽扱いだった
・場所は奥さんの実家が福岡市西区ということで、夏休みにはよく遊びに行き、気に入っていた糸島半島を選んだ。霜が降りないということも条件に合った。これが平成元年のことである。
・その頃から、世間では有機農業ブーム。元同僚の友達も鶏を平飼い(地面に鶏を放して飼う)して、消費者グループに卵を卸す事業をしていて、結構売れていた。これを知って、志摩町で5反の土地を買って、鶏の平飼いを始めた。
・養鶏場ということで地元の理解を求めるのは大変だった。当初は公害はないと説明しても、臭いがでるということで、集落で反対会議がもたれたこともある。絶望的になったが、200羽に羽数を減らすと申し出たところ、近所のおじいさんが「200羽なんか道楽ばい」と言ってくれて、ようやく飼うことができた。
・鶏はストレスと病気になる割合が比例している。運動ができる広さを確保し、鶏に体力的なストレスを感じさせない環境を作ったので、卵にも良い影響を与えている。また、鶏はよくイタチに襲われるというが、イタチは卵を1個食べられれば、雛や親鳥を狙うことはない。逆に、ネズミが寄らなくなるので、歓迎だ。緑の農園ではイタチと鶏の共生ができる。
●安心な食べ物を食べたい
・つてで売り始めたが、卵の評判は良く、その当時、餌は普通のものだったが、地面に鶏をおろしただけで、他の卵と味が違うことに気づいた。
・もともと、腎臓病が子どもへ遺伝することを心配していた。食べ物に含まれる添加物や残留農薬の問題について考え、卵だけでは、自分の使命を果たしていないと感じ、「緑の農園」として、自分、家族、お客様に卵と一緒に安心な食品の配達を始めた。
・野菜は、家庭菜園のような作り方をされている方に作ってもらったり、志摩町に、本物の醤油を作っている人がいたりと、糸島半島内で手に入れることができた。それでもない場合は、全国ネットで探し、2年間でほぼ日常生活に必要で安全な食料品が手に入るようになった。
●12年間のノウハウを活かしフランチャイズへ
・「つまんでご卵」は、比較的少数の羽数で平飼いし、餌も自分で配合したのを与える養鶏方法で生産された自然卵である。主な特徴として、
 @腐らない、基本的に無菌卵である。
  (夏場でも常温で4カ月保管できる)
 A高品質である。(黄身をつまんで持ち上げること ができ、卵独特のニオイがない)
 B低コレステロール、低アレルギー卵である。
 C薬剤を使わずに生産した卵である。
 が挙げられる。ここでは1個40円で販売している。
・売上げの割合は自店、宅配、スーパーへの卸しが1/3ずつ。産直の雑誌やテレビで紹介されたことで、全国から注文が殺到するが、1カ月待ってもらう宅急便のお客さんもいる。それでもリピート率は8割。さらに長期に渡って5割が継続して注文する。
・その背景には、東京・福岡などの都市でアンケート、をとると約55%の主婦が「高くてもいいからいい卵が食べたい」と答えるが、実際にこういった卵は流通していないという現状がある。主婦はやはり敏感なようだ。一般に流通しているのは赤玉の特殊卵だが、この特殊卵の場合も、餌にビタミンなどを混ぜたケージ飼いのものも多いようだ。
・平成13年4月現在、約5,000羽飼っている。本当はも っと経営規模を広げたいが、土地取得などが大変だ。 むしろ、平飼いで様々な問題を克服してきたノウハ ウをもってフランチャイズ方式もあると考えた。
・今は志望者を6カ月研修で受け入れている。現在数 名の方が修行中で、半分は脱サラの方である。技術 を身につけ、土地さえ見つかれば(これが難しい)、 既に卵の特徴(品質)、「つまんでもくずれない」 というデモストレーション、ネーミングというこの 3点は、かなりインパクトがあるので営業の心配は いらない。九州全体で50万羽くらい飼っても需要は あり、品質で負けはしない。
●時代が味方をしてくれた
・実は商社時代このような養鶏をされている人に出会った。しかし、当時の社会には早すぎたのか、早瀬さんの目にも「変わった人」に映った。12年前、将来は自然卵の競争になると感じ、人より絶対良い卵を作ろうとスタートしたときは、やはり「変わった人」という目で見られた。しかし、その信念を持ち続けられた今日、時代が動いてきた。ヨーロッパではケージ飼いでの鶏の飼育を禁止する国もでてきて、平飼いの良さを見直す動きが強い。
・今後は、平飼いでの大量飼育システムが開発され、価格競争になると自分はみている。その時に、競争に飲み込まれないよう、品質のさらなる向上とお客様とのつながりを大切にしたい。
●これは行って自分の舌で確かめなくては!
 後日、私は友達とお店に行ってみた。あいにくその日は雨だったが、駐車場には整理の人がつき、店内もお客さんで一杯。ソフトクリームもおいしいと伺っていたので、早速食べることにした。このソフトクリーム、口にした瞬間は濃厚なのに後味すっきり。初めての味だった。昼食後に行ったので、5人で1個にしようと話していたが、その食感に結局、各自1個ずつ食べてしまった。また、卵かけご飯も味わった。
 早瀬さんは、「今日の来客数はうちの限界を越えています」と言いながらも、一人一人に声をかけて話しをされていた。このような人柄がさらにファンを増やされているのだろうと思った。
               (あいこう みほ)


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