<よかネット>No.51 2001/05
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浮羽町の歴史文化を今に伝える魅力的な地域資源となりうるか
〜浮羽町山北の河北家〜

河北家は、福岡県浮羽町山北に居を構えて約500年にもなる名家である。現在、この河北家の当主である宣正さんは27代目である。現在の母屋は明治期、土蔵は江戸期に建てられている。これらの保存活用を考えたいということで、去年の夏頃にはじめてお会いした。
●河北家をどのように保存活用していくか
 敷地約2,000坪のこのお屋敷は、母屋といくつかの土蔵からなっている。しかし、いずれも年々傷みがひどくなっており、年間何百万もの修理費がかかっている。 よかネット2001.1(49号)では福岡県川崎町の「魚楽園」について触れたが、魚楽園では、入園料を徴収している他、顕彰会(ファンクラブのようなもの)をつくり、会員を集め、会費を募っている。また、地元企業から出資金を募っており、行政に頼ることなく、民間の力で積極的に保存活用を進めている。歴史のある建物を次世代に残すためには、何とかして維持・管理費の捻出を図らなければならない。即ち、お金を落とすシステムが必要である。
 河北家の建造物で問題になっているのが、高額な修理費である。瓦の葺き替え、漆喰の塗り替えなど、傷んだ箇所を部分的に修理しているため、かえってコストがかかっていることである。一度、大規模な修理をして、しばらくは修理の必要がない状態をつくっておきたいところである。
 

伝統的建造物の修理について、魚楽園では国指定名勝のなかに建っている建物ということで文化庁の補助事業である「史跡等保存整備事業」が適用され、大修理を行った。
 このほか、国の選定する重要伝統的建造物群保存地区内であれば、伝統的建造物の修理に際して、自己負担が伴うが、最大800万円までの補助が受けられる。しかし、河北家のように民間所有でかつ、1世帯のみの伝統的建造物の修理には適当な補助事業がないのが現状である。
 現在、河北家のお屋敷は国の登録文化財の指定のための手続きを進めている。顕彰会などをつくる際、河北家の保存活用の価値を示すための国のお墨付きをとするのが目的である。また、地価税の1/2の軽減、固定資産税の1/2以内の軽減などの優遇措置がある。これよりもさらに税制面で優遇されるのが国指定重要文化財であるが、活用に際して家屋内の改変が全く認められないため、適当でないと考えられる。
 河北家に代々残るものは建物だけでなく、年間を通して行われる行事がある。河北家独自で行うもの、周辺の神社で行うものがある。そのなかでも、大がかりな行事に「壁結い」がある。屋敷周辺の集落の方や親戚の方が集まって河北家の屋敷周辺をとりまく竹垣を丸一日かけて結っていく行事である。年々、参加者が少なくなり、高齢化しているため、行事の存続が危ぶまれている。参加型のイベントと捉えて、飛び入り参加できるようなシステムをつくることも検討していくことが大切だろう。
     
●反近代化主義こそ伝統あるものが守っていける!?
 浮羽町は名水の里としても有名で、隣接する星野村との境に清水寺があり、1日に700m3もの水が湧き出る池がある。ポリタンクをもって遠方からも水を求めてやってくる。
 河北さんはこの清水湧水の保存会会長を務めている。最近になって、立派な水汲み場と駐車場が整備された。これによってさらに客が増えた。しかし、客が増えたことにより、なかにはゴミを散らかしていく客など、マナーを守らない客がおり、水汲み場の整備によってかえって、「清掃」という仕事が増えたことを嘆いていた。河北家の保存・活用についてもそれを最も心配されている。
 最近の観光資源の整備には駐車場整備がほとんど不可欠と言っていいほどになっている。車が進入することによって、かつての景観や静けさ、自然への影響など、犠牲になっているものを忘れがちだ。「昔の環境を守るためには駐車場なんてすぐ近くにつくらなくて、5分ぐらい歩いてもらっても、ばちはあたらんと思うとですよ。」と河北さんはおっしゃった。
 
  このほか、河北さんのお屋敷の近くまで来ると、車が離合できないほどの幅の道やカーブがあり、玄関へとつながっている。これについても「道幅を拡げてアスファルトで舗装することが環境の整備になるとは思っていない。」ということだった。確かに昔からの竹垣のある風情のある景観が守られている。
 このほか、河北さんの「反近代化」のこだわりは家の中の生活にも現れている。冷房はなし、暖房はほとんどつけない。蚊や蝿などの虫除けのための網戸はつけない。蚊帳もない。蚊については「蚊を避けようとすると刺されます。蚊と共生しようと考えると刺されない。」ということだった。
 また、屋敷内には小さな畑があり、農作物をいろいろと育てているほか、この時期ではタケノコ、タラの芽などのほか、食べられる植物についてもよくご存じで、自生しているのを採ってきて天ぷらなどにしていただくそうだ。「1ヶ月の食料費は約5,000円です。」なるほど、食生活も反近代化している。反近代化こそ、伝統あるものを守っていける秘訣かも知れない。
     
●保存・活用のアイデアはいろいろあるが・・・
 河北家は歴史ある浮羽の豪農というより、画家の青木繁を発掘した美術評論家「河北倫明」の生家としての知名度が高い。
 河北倫明といえば、美術史家、美術評論家、美術館人として、それぞれの分野で優れた業績をあげた人として知られている。また、河北家の土蔵には多くの美術品が残されている。さらに、多くの書物、民具など、この家に正式に住むようになって数年しか経たない河北さんも全ては把握していないそうである。「毎日が、ディスカバー『自分の家』ですよ。」という言葉が印象的だった。
 
 

単に展示をするだけの美術館、史料館では展示品の定期的な更新が必要であるほか、収蔵法についても気を使わなければならない。その上、リピーターを増やせるかは疑問である。
 河北家には三方を庭に囲まれたお座敷がある。敷地内には3本の小川が流れており、5月頃になると、ホタルが出て、このお座敷からの眺めは最高だそうである。このような自然に囲まれて、食事または菓子・茶などを楽しむことができれば、一層魅力的なものになるだろう。
 このように、アイデアは色々と出るが、本当に採算が取れるかどうか、個人の所有なので、失敗したときのリスクを考えるとなかなか踏み出せないのが、現在の状況である。現在は、できるだけ多くの同様の事例を見て回りたいと考えている。事例をご存じの方や事業手法についてアイデアのある方はぜひ御連絡を。       (おだ こういち)



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